宗教と僕 #2
一週間ほどして、彼らはまた同じことを口にした。この世が彼らの教えで満たされるのは間違いない。あなたは何を疑っているのか。入信すればそれが真実であることがわかる、云々。そうすると僕が返す。そんなに確実に、まるで夜が明けて朝が来るようにそんな世が来るのなら、何故入信にそんなに拘るのか、そこがあなた方の信仰の一番油断のならないところだ、云々。
そういったやり取りが延々と続くのである。僕もまだ若く、体力もあったのだろう。このような状況が二週間ほど続いたある日、僕は彼らの会合に出かけて行った。とにかく様子をきちんと見なければ、埒が明かないと考えたのだ。そこまではいい。ただその日、僕は彼らと喧嘩して引き揚げてきたのである。残念ながら、その理由を覚えていない。折角出かけていったのだから、何があったのかぐらい当然覚えているだろうと思ったのに、完全に抜け落ちてしまっているのだ。申し訳ない。
ただ、彼らとの付き合いはそれで絶えてしまったのだ。ところが僕は今、その会派の北海道支部長と親しくお付き合いをしている。それは宗派の問題ではなく、出版業務に関することなのだが、関係はすこぶる上手く行っている。有難いことだ。
何よりも嬉しいのは、彼がいっさい自分の宗教の宣伝をしないことである。もちろんそれが話題になることはあるが、彼の口調はいつも一般論であり、こちらが無理強いされている印象は全くない。その宗派の健全振りが理解できるのだ。