宗教と僕 #1
大学生で、三鷹に下宿していた頃の話だ。僕は吉祥寺生まれで、六つの時に逗子へ移っている。したがって当時はまだ知人が三鷹や吉祥寺周辺にはいたのだ。その内の一軒で下宿していた頃の話である。
僕は当時、大学に入ったばかりで希望に燃えていた。とにかく何でも知りたいという気概に満ちていたのだ。するうちに、その家の長男――彼が僕の兄貴の学友で、それが縁で借りることになったのだ――が当時猛烈に流行っていた宗教の信者で、僕にも入らないかと言ってきたのだ。
僕は宗教には並々ならぬ関心を持っていたので、その宗教に入るかどうかはわからないが、話は聞きたいと答えた。それからである、彼らの“来襲”に悩まされるようになったのは。何時ごろならいいか、と言うので夜中だと答えると、毎晩彼らがやって来るようになったのだ。凄い人数である。毎晩、2,30人がやって来て、僕の部屋で僕を丸く取り囲み、明け方まで説得するのである。僕も最初は面白かったのだが、段々に飽きてきた。だっていつも同じ話の繰り返しなのだから。
僕も彼らも、しだいに口の聞き方がぞんざいになって来る。しかし僕は、彼らが何故こんなにも熱意に溢れているのかが理解できず、僕の関心はしだいに主題を離れ、そちらの方へ近づいていった。
みんな若く、いずれもきりっとした面立ちで、ふざけているような気配はまったくない。だからこちらも簡単には気が抜けないのだ。彼らも仕事があるだろうに、大丈夫かなという気分にもなってくる。