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正義感の裏にあるもの

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正義感の裏にあるもの

皆さん、電車に乗るチャンスはいろいろあるでしょう。日本ほど電車網が発達したところはないと聞いて安心していたのですが、最近の北海道はもうそうはいきません。最近では多くの電車区間が廃止になったりバス路線へと転換になったりしています。残念ですが仕方がないようにも思います。

しかし今日僕が言いたいのはそのようなことではなく、皆さんが電車やバスに乗るときの態度なのです。僕は大学時代に大阪へ行こうとして、東京駅から汽車に乗ったことがあります。どういう旅行だったかは忘れましたが8時間ほどの旅ですね。東京駅で乗ったときには空いていたのでい座ったものの、新橋駅で人がどっと乗り込んできて、一気に満員になりました。 

僕の横には老人が立っています。僕はすぐに立ち上がり、席を譲りました。そして大阪までずっと立っていたのです。まあ、話はそれだけで何てこともないのですが、僕は窮屈なバスのなかでまず座ったことがありません。この場合は長距離バスではないので、30分も乗っていれば目的地に着いてしまいます。

僕はまた、子供二人にもなるべく立っている様にと教えてきました。長男が「どうして?」と訊いてきたので、僕は「それが正義感ってものなのさ」と教えたものです。息子はわからないなりに、何となく得心したようでした。

僕は正義感というものを大切にしています。正義感と言っても、これは、俺がやらなければ誰がやるんだ、という一種の勝手な思い込みです。これはよほど気をつけないと、自分勝手な思い込みに過ぎなくなり、世の中にたくさんいる“暴君”の二の舞になりかねません。

僕には、自分より弱い人間に優しく、というのが第一義にあります。自分が若い頃には、たとえ錯覚であれ、誰もが自分より弱く見えるときがあるでしょう。しかしそれに徹していると、次第に人間関係が“強弱”でしか見られなくなってしまいます。つまり、世間にたくさんいる“普通”の人間との関係がおかしくなってくるのです。

僕にはどうやら、その欠点があるようです。何時まで経っても自分の非力に気がつかず、自分は強いと思っている。何とかなると思っている。しかしそういう僕に、やがては友人のほうが匙を投げてしまうのです。僕は何て愚かなんだろうと良く思います。皆さんも十分に注意してくださいね。正義感にも裏と表があるのです。いえ、全てのものがきっとそうなのでしょう。

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山本光伸プロフィール

 札幌で出版社・柏艪舎と文芸翻訳家養成校・インターカレッジ札幌を経営しています。
 80歳で小説家デビューを機にブログをはじめました。
 ロバート・ラドラム『暗殺者』、アルフレッド・ランシング『エンデュアランス号漂流』(新潮社)、ボブ・グリーン『デューティ』(光文社)他、訳書は200冊以上。

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