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小説
太宰治を胸に秘めて #3
太宰治を胸に秘めて #3 小泊では、ちょうど運動会が行われていた。そこで太宰はたけと三十年ぶりに再会する。その名場面をちょっとここで、長いけれども書いてみよう。 -
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太宰治を胸に秘めて #2
太宰治を胸に秘めて #2 『人間失格』や『斜陽』によって有名になったかに思われる太宰にとっては、しかし、それもまた彼自身が時代に刻んだ己の姿なのだと思われるのだ。あー、僕は彼に会うことはできなかった。僕は大学が三鷹だけに、彼が自殺した用水路の辺りをしょっちゅう歩いていたものだ。その度に、僕は「太宰さん」と呼びかける。彼が飛び込んだと思われる地点に何時間も佇んでいる。 -
小説
太宰治を胸に秘めて #1
太宰治を胸に秘めて #1 何度も書いているが、僕が一番好きな作家は太宰治である。読み始めてから70年ばかりが経っているので、単なる“昔馴染み”なのかもしれないが、それでも彼の作品は全て、何度となく読み終え、彼について書かれたさまざまな評論や思い出などにもほとんど目を通してきただけに、この思いには確信に似た想いがある。 -
人生について
ダンスパーティー AFS アメリカ留学の思い出 #2
ダンスパーティー AFS アメリカ留学の思い出 #2 十代の若者は世界のどこでも、誰かに自分の意思を伝えたいと必死になっているものだろう。まあ、もちろん例外もあるだろうが、それはこの際、お引き取りを願うとしよう。そうしなければ話は前に進まない。 -
人生について
ダンスパーティー AFS アメリカ留学の思い出 #1
ダンスパーティー AFS アメリカ留学の思い出 #1 アメリカの高校で体験したことの一つに、女性が誘うダンスパーティがあった。この件に触れるのは六十年以上が経った今が初めてなのだからびっくりする。その時はこちらもちゃんと誘われたので文句もなく、忘れてしまっていたのだ。 -
人生について
鎌倉学園と剣道 #2
鎌倉学園と剣道 #2 僕はどういうわけか喜んだものの、そんなはずじゃなかったと文句を言う奴も多かった。たぶん高校側としては、当時鎌倉では有名だった“不良学校”のイメージを叩き壊そうとしたのだろう。またこの先生ほどその役職にピッタリの方は居なかったのではないだろうか。とにかく剣道がめちゃくちゃなのだ。めちゃくちゃと言っても、出鱈目というわけではなく、僕たちの常識では測り切れないほどめちゃくちゃだった。 -
人生について
鎌倉学園と剣道 #1
鎌倉学園と剣道 #1 ちょっと話題を変えて、中学時代の話を。神奈川県の逗子に実家があり、僕は53歳までそこで暮らしていたのだ。中学・高校と鎌倉学園に通った。高校三年の夏にアメリカへ一年間留学したので、丸六年間鎌倉学園にいたわけではないが、僕の中では、学園を卒業したと思っている。後輩には桑田佳祐がいて、誰もが、彼と同じ学校だぜと自慢するものらしい。 -
人生について
宗教と僕 #3
宗教と僕 #3 新興宗教に関して思うことだが、日本人はだいたい、信者と無関心派の二種類に大別されるようだ。僕はしかし、その宗教に関心を持ちながらも、無信者でいる人が必要なのではないかと思うのだ。 -
人生について
宗教と僕 #2
宗教と僕 #2 一週間ほどして、彼らは全く変わらないことを口にした。この世が彼らの教えで満たされるのは間違いない。あなたは何を疑っているのか。入信すればそれが真実であることがわかる、云々。そうすると僕が返す。そんなに確実に、まるで夜が明けて朝が来るようにそんな世が来るのなら、何故入信にそんなに拘るのか、そこがあなた方の信仰の一番油断のならないところだ、云々。 -
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宗教と僕 #1
宗教と僕 #1 大学生で、三鷹に下宿していた頃の話だ。僕は吉祥寺生まれで、六つの時に逗子へ移っている。したがって当時はまだ知人が三鷹や吉祥寺周辺にはいたのだ。その内の一軒で下宿していた頃の話である。