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畑 正憲氏の思い出 ①

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畑 正憲氏の思い出 ①

 先日、畑 正憲氏が亡くなられた。私にとっては、この世で最高の人物であると思っていただけに、その喪失感は実に深い。対処できないほどである。彼の功績については誰もが口にすることであろうし、周知の事実なので私が改めて言うべきことではないだろう。               

 私は北海道で出版業を興し、それが縁で畑氏と知り合うチャンスを得た。彼の作品二冊を出版し、札幌の紀伊國屋書店での講演も行なった。畑氏は胃を切除しているため、食後一時間ほどは安静にしていなければならなかったが、そのほかでは全く矍鑠として、年齢の近い私などは唖然として見守ったものである。

 講演前後の話も面白かった。まさに談論風発で、聞くものを魅了してしまうのだ。その講演の最後で、我々は先生の御本を販売し、氏はずらりと並んだ50人ほどのファンの前で、一冊ずつにサインをし、動物の絵を書き込んだ。

 講演を含めて時間はすでに三時間を超えており、かなり疲労されているのではないかと思われた。ところが、彼は一冊ずつ目の前に自分の本が並べられると、急に全身に生気が漲り、かっと目を見開くや稲妻のようにペンを走らせ、あっと言う間に大勢のファンの要求に応えたのだ。

『ムツゴロウの東京物語』出版記念トークイベント。紀伊國屋書札幌本店で。2008年4月6日。

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山本光伸プロフィール

 札幌で出版社・柏艪舎と文芸翻訳家養成校・インターカレッジ札幌を経営しています。
 80歳で小説家デビューを機にブログをはじめました。
 ロバート・ラドラム『暗殺者』、アルフレッド・ランシング『エンデュアランス号漂流』(新潮社)、ボブ・グリーン『デューティ』(光文社)他、訳書は200冊以上。

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