三島由紀夫の嘆きについて考える ⑦
先日もある集まりで、90代の婦人が遺産分けの話を持ち出しました。息子が3人いて、いろいろ事情があって、配分に差をつけたいらしいのです。僕は聞いているうちにひどく不愉快になりました。まるで海賊か山賊たちの戦利品の山分けのようではありませんか。僕かそんなにお困りなら、ユニセフにでも寄付されたらいかがでしよう、と冗談交じりに言ったところ、その老婦人は僕をひと睨みし、さらに悠然と話を進めたのです。
僕のこのような考えには、明らかな弊害があります。そこが僕の一番弱い所なのです。つまり、貸した金はもちろんのこと、借りたお金のことまで〝忘れて〟しまうのです。いえ、今回の場合、忘れてのうのうと人生を楽しんでいるわけではなく、お返しするお金がないのです。もうそんな状態が20年余りも続いています。その頃には20数名いた従業員も、現在は6名です。しかし昨年暮れには、大手印刷会社への返済が終わったとの連絡があり、僕が個人的にお借りしたお金も一部お返ししました。
それでもまだ借金はたっぷりとあります。今は今後十年を目標に全額返済を考えていますが、それが一年でも早く終えるようにと頑張っているところです。やはりお金はあげる側に徹するべきで、借りて返さないでは男の面目が立たないということがようくわかりました。あと10年と言えば、僕は90歳、いかにも遅すぎる話ですが、どうかご勘弁をいただきたいと思います。