大学に8年間通った理由——僕の大学時代③
そういったことはさて置き、僕は8年かかって大学を卒業しました。仲間たちはどんどん卒業してゆきます。僕は体育の試験を落として留年するわけです。今考えても、どうして自分は卒業したくなかったのだろうと思います。普通、大学生は150 単位ぐらいを取って卒業するわけですが、僕は300単位以上を取ってまだぐずぐずしていたのです。両親も兄弟も文句らしきことは一言も言いません。それもまた、今にして思えば不思議なことでした。信じられていたのか、無視されていたのか?
僕が得心できるのは、そのことで一切不服を口にしなかったことでしょう。奇妙に聞こえるかもしれませんが、僕は将来に一切不安を抱いていなかったのです。それだけは確かです。どのようにすれば、自分は自分自身を百パーセント発揮できるのか……僕に関心があるのはただそのことだけだったのです !
ですから、僕の8年間は決して無駄ではなかったように思います。たしかに遊びもしましたが、何と言っても覚えているのは、その読書量でしょう。僕は本当に本が好きで好きでたまらなかったのです。しかし長ずるに及んで、読書がいったい何の役に立つのか、という疑問の声が聞こえてきました。読書がいったい僕に何を与えたのか、それは一種の教養であり、また一種の傲慢であったように思います。そのような相反する気持ちに脅かされながら、僕の “大人” の人生は28歳でスタートしたのです。