中退した大学を再受験?——僕の大学時代②
ICUの大学入試はかなり変則的で、試験ではまず膨大な資料を読ませられます。その資料内容が理解できれば、試験もパスできるだろうというわけです。しかしそうは言っても、僕が辛うじて自信があるのは日本語と英語だけで、他の科目には目を瞑るしかなかったのです。試験日、会場には空手部の連中が場内整理に駆り出されていました。そしてそのうちの一人に見つかってしまったのです。
「あれ、先輩どうしたんですか?」と遠慮のない大声が飛び、皆が振り返ります。僕は曖昧にうなずくだけで、逃げるのに必死だったものです。それにしても、どうして受かったのでしょうか? これは僕の人生の中でも不思議な経験の一つです。
考えてみれば、僕の人生はいくつかの大きな “好運” に左右されているようです。高校三年の時の、AFSの留学試験にもし落ちていたら? ICUの大学入試にもし失敗していたら? またもし文芸翻訳という職業に採用されなかったら?
僕は自分の人生に甘やかされているような気がしてなりません。そしてもしそうであるのなら、どこかに感謝する必要があるのではないかという気がしています。気がしている、ということは、その答えがまだ見つかっていないということでしょう。僕は今80歳ですが、最近十五年間ほどの低調ぶりは我が目を蔽いたくなるほどです。どこかで何かを失敗したのでしょう。その失敗の原因を探り、手を打つことができるのなら何とかして手を打ちたいと、現在真剣に考えているところです。