目次
山本光伸の翻訳教室 ⑦
☆原作の香り
文芸翻訳家志望の方の中には、原作の香りを生かした翻訳をしたいと考える人が多いようだ。もちろん、そのことに文句をつける筋合いはない。が、無邪気にそう言ってのける学生達の顔がまぶしく、私としては本当にそういうことができたらいいのに、と重い溜め息をつくだけだ。
そもそも、原作の香りとは何なのか? どうしたら香りが出てくるのか? 実は、私にもそこのところがよくわからない。文体なのか? 言い回し? 用語? リズム? おそらく文芸翻訳家にとっては、それが永遠の課題になっていることだろう。
例えば、センテンスの長い文章は長く訳すのがいいのか。短い文章はその逆か? あるいは、華やかな文章は、気持ちの悪い文章は、寂しい文章は……といろいろある。まずは、原文の香りをかいでみることから始めるしかないようだ。
私はまず、各単語の持つ意味合い、ニュアンスをなるべく深く知ることだと思っている。例えば、同じ“性格”の意を持つcharacterとpersonalityではどこがどう違うのか。辞書に漫然と当たっているだけでは、そういうことはわからない。
それぞれの単語は著者が意図的に用いたものなのだから、そこを掘り下げていけば、あわよくばある程度の香りが出てくるのではないか、と私は勝手にそう考えている次第だ。今のところ、私が原文の香りを意識するのは、それくらいのところなのである!
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山本光伸 翻訳教室 ①
山本光伸 翻訳教室 ①
僕はこれまでに、柏艪舎から翻訳に関する本を2冊出しています。『誤訳も芸のうち』と『R・チャンドラーの「長いお別れ」をいかに楽しむか』です。一作目は、文藝翻訳は一生の仕事足りうるか、という副題が付き、二作目は、清水俊二、村上春樹、そして山本光伸の訳文を併記し、何所がどう良くて何所がどう悪いのかを列記しています。また翻訳と言う作業のコツみたいなものがわかってもらえるかもしれないとも書いてあります。
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山本光伸 翻訳教室 ②
山本光伸 翻訳教室 ②
ここには誤訳が一つと、僕が先ほど得意げに述べた、日本語と英語の表現方法の明確な違いがあります。この二つに僕が気付いたのは、丁寧に英文と日本文を読み比べたからではなく、あくまでも英文(つまり訳文)を読んでいて、おかしいなと思ったからなのです。僕がいつも言っている、オリジナルを書くように訳せ、の面目躍如と言ったところですね。
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山本光伸 翻訳教室 ③
山本光伸 翻訳教室 ③
ではついでにもう一つ、スティーヴン・キングの秀逸な短編『ウェディング・ギグ』(The Wedding Gig)の中に、次のような一節があります。この短編は、妹思いの愛すべき小悪党スコレィの、大いに愉快で、ちょっぴり切ない物語です。
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山本光伸の翻訳教室 ④
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☆文芸翻訳家への近道
言うまでもなく、近道などあるわけがなく、より“確実な道”と言い換えるべきだろう。
それは、自分で小説を書いてみることである。
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☆文法について
乱暴な言い方かもしれないが、文法に拘る方で翻訳家として一本立ちした人を見たことがない。
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山本光伸の翻訳教室 ⑥
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☆automatically
私は副詞の訳し方がいちばん難しく、だからこそいちばん面白いと思っている。
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☆原作の香り
文芸翻訳家志望の方の中には、原作の香りを生かした翻訳をしたいと考える人が多いようだ。
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山本光伸の翻訳教室 ⑧
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☆距離
文芸翻訳にとって大切なものは、原文と訳文との距離感だろう。初心者であればあるほどほどこの距離感に無頓着で、テキストが何であれ、自分のリズムでしか訳せない。
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山本光伸の翻訳教室 ⑨
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☆訳者と読者
翻訳家は自分の訳した原文をどれほど覚えているものだろうか。個人差があって当然だが、私はほとんど覚えていない。