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山本光伸の翻訳教室 ⑦

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山本光伸の翻訳教室 ⑦

☆原作の香り

 文芸翻訳家志望の方の中には、原作の香りを生かした翻訳をしたいと考える人が多いようだ。もちろん、そのことに文句をつける筋合いはない。が、無邪気にそう言ってのける学生達の顔がまぶしく、私としては本当にそういうことができたらいいのに、と重い溜め息をつくだけだ。

 そもそも、原作の香りとは何なのか? どうしたら香りが出てくるのか? 実は、私にもそこのところがよくわからない。文体なのか? 言い回し? 用語? リズム? おそらく文芸翻訳家にとっては、それが永遠の課題になっていることだろう。

 例えば、センテンスの長い文章は長く訳すのがいいのか。短い文章はその逆か? あるいは、華やかな文章は、気持ちの悪い文章は、寂しい文章は……といろいろある。まずは、原文の香りをかいでみることから始めるしかないようだ。

 私はまず、各単語の持つ意味合い、ニュアンスをなるべく深く知ることだと思っている。例えば、同じ“性格”の意を持つcharacterとpersonalityではどこがどう違うのか。辞書に漫然と当たっているだけでは、そういうことはわからない。

 それぞれの単語は著者が意図的に用いたものなのだから、そこを掘り下げていけば、あわよくばある程度の香りが出てくるのではないか、と私は勝手にそう考えている次第だ。今のところ、私が原文の香りを意識するのは、それくらいのところなのである!

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山本光伸プロフィール

 札幌で出版社・柏艪舎と文芸翻訳家養成校・インターカレッジ札幌を経営しています。
 80歳で小説家デビューを機にブログをはじめました。
 ロバート・ラドラム『暗殺者』、アルフレッド・ランシング『エンデュアランス号漂流』(新潮社)、ボブ・グリーン『デューティ』(光文社)他、訳書は200冊以上。

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