目次
山本光伸の翻訳教室 ⑥
☆automatically
私は副詞の訳し方がいちばん難しく、だからこそいちばん面白いと思っている。
例えば、I said, “ hello” automatically.という文章がある。このautomaticallyを、「機械的に」と訳すことはもちろん可能だが、「とっさに」、「すかさず」、「いつもの調子で」、と表現することもできるだろう。
とにかく、学生の訳文や下訳者の文章を見る場合、私がまずチェックするのは副詞の訳し方だ。辞書の言葉を“機械的に”当てはめているようでは話にならない。副詞、形容詞に神経を使っている人の文章は、全体的に細かい配慮がなされているようだ。
これは理解力というよりは感性の領域だろう。つまりそれだけ訳者個々の感性が試されているということなのだ。あなた独特の感性を十分に発揮していただきたい。
そしてこの感性を発揮するためには、あなた個人の感性が豊かであることが必須条件だろう。自分のこの条件不足を辞書で補おうとするケチな根性は失くすほかはない。少なくとも、翻訳家になると思うなら、それは絶対的なことのように思われる。
辞書にこだわる皆さん。辞書なしで英語の本を読んでみることです。それも、わからないところは何度も読み返して、一応あなたの判断力を試してみることです。何冊か読んでいけば、必ず効果が表れるはずですよ!
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山本光伸 翻訳教室 ①
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僕はこれまでに、柏艪舎から翻訳に関する本を2冊出しています。『誤訳も芸のうち』と『R・チャンドラーの「長いお別れ」をいかに楽しむか』です。一作目は、文藝翻訳は一生の仕事足りうるか、という副題が付き、二作目は、清水俊二、村上春樹、そして山本光伸の訳文を併記し、何所がどう良くて何所がどう悪いのかを列記しています。また翻訳と言う作業のコツみたいなものがわかってもらえるかもしれないとも書いてあります。
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山本光伸 翻訳教室 ②
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ここには誤訳が一つと、僕が先ほど得意げに述べた、日本語と英語の表現方法の明確な違いがあります。この二つに僕が気付いたのは、丁寧に英文と日本文を読み比べたからではなく、あくまでも英文(つまり訳文)を読んでいて、おかしいなと思ったからなのです。僕がいつも言っている、オリジナルを書くように訳せ、の面目躍如と言ったところですね。
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山本光伸 翻訳教室 ③
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ではついでにもう一つ、スティーヴン・キングの秀逸な短編『ウェディング・ギグ』(The Wedding Gig)の中に、次のような一節があります。この短編は、妹思いの愛すべき小悪党スコレィの、大いに愉快で、ちょっぴり切ない物語です。
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☆文芸翻訳家への近道
言うまでもなく、近道などあるわけがなく、より“確実な道”と言い換えるべきだろう。
それは、自分で小説を書いてみることである。
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☆文法について
乱暴な言い方かもしれないが、文法に拘る方で翻訳家として一本立ちした人を見たことがない。
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☆automatically
私は副詞の訳し方がいちばん難しく、だからこそいちばん面白いと思っている。
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☆原作の香り
文芸翻訳家志望の方の中には、原作の香りを生かした翻訳をしたいと考える人が多いようだ。
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☆距離
文芸翻訳にとって大切なものは、原文と訳文との距離感だろう。初心者であればあるほどほどこの距離感に無頓着で、テキストが何であれ、自分のリズムでしか訳せない。
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山本光伸の翻訳教室 ⑨
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☆訳者と読者
翻訳家は自分の訳した原文をどれほど覚えているものだろうか。個人差があって当然だが、私はほとんど覚えていない。