山本光伸作品集2『光る道』刊行のお知らせ!
さて、年の瀬が迫ってきましたね。僕の次の作品を紹介します。今回は、僕が書いた唯一の翻案小説、『光る道』をご紹介しましょう。これは原作がスティーブン・キングの短編で、原題は『The Reach』、邦題は『入り江』と言い、扶桑社の文庫本に僕の翻訳で収録されています。(扶桑社ミステリー『スケルトン・クルー〈3〉ミルクマン』収録)
僕は実は、この作品に惚れ込んでいるのです。スティーブン・キングはそれこそさまざまな作品を書く、アメリカでもトップクラスの作家であることは皆さんご承知でしょう。僕はしかし、この『The Reach』と並び称される他の短編にはお目にかかったことがありません。それほどに本書は強烈な印象を僕に残しました。そして長年、僕は本書を翻案小説として完成させたいと思っていたのです。
舞台は北海道の日本海オロロンライン、留萌の先の初見(架空)というところです。そこに竜蔵一家が住んでいます。竜蔵は今や90を超え、まだ身体は動くものの心臓に不安を抱え、そのことは家族に告げぬまま一日一日を送っています。
竜蔵の思い出話の要領で昔話が語られてゆきます。昔はこの地に羽幌線が走っていたこと、タコの話、ならず者の話、苦しかった生活の話……その話のあいだに、現在の家族とのやり取りや生きていく上での苦労話が挟まります。
そしてある夜、竜蔵はふと起き上がると、意を決したように初見駅へ向かって歩き出しました。まあ、大意はこのようなものですが、その厚さ、濃さ、そして感動の深さは類を見ません。皆さま、是非お読みになってご意見をお聞かせいただけたらと思います。
「入り江」が収められている、スティーブン・キング『スケルトン・クルー〈3〉ミルクマン』