破滅への道? ①
さてお次は、少し砕けて借金の話をしましょう。僕はとにかくお金の話が苦手なのですが、とはいえ溢れんばかりの借金があり、返せない僕を泥棒呼ばわりする友人もいるくらいです。それも当然だと思います。僕は今、90歳までに全額返済を決意して頑張っているところです。
しかしそれは僕の決意であって、貸したほうはそんな事は言っていられず、僕のところへ矢のような催促文が送られてくるのです。いやあ、きついですね。現金が皆無なので謝るしかないのですが、それでは納得してくれません。本当にどうしたらいいのでしょう。
僕は53歳で札幌へやって来ました。当時の僕は張り切る一方で、お金がないなどとは考えすらしませんでした。それまでの20年間ほど、僕は文藝翻訳家として大いに稼いでいたのです。年収2,3千万と言ったところでしょうか。ところが北海道へ来て、事業家の真似を始めたとたんにおかしくなりました。それでも65歳過ぎまではよかったのです。何百万の印税が振り込まれるたびに、それを柏艪舎の事務員に渡していました。つまり苦しさは僕一人のものだったのです。
僕はやがて翻訳を辞め、柏艪舎の建て直しに全力を傾注しようと思いました。そしてその時もまだ、頑張ればなんとかなると思っていたのです。時代が読めない、とはこういうことを言うのでしょうか。いくら頑張っても状態は悪くなるばっかりなのに、僕は未だにもう少し待ってくれ、と誰彼なしに言い続けていたのです。
やがて大手新聞社が我々から離れていきました。そしてそれに続けとばかりに、幾十もの企業が去ってゆきました。それでも僕はまだ気付かなかったのですから、普通ではありませんね。僕はつまり、知らぬ間に破滅への道を突き進んでいたのです。