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小林龍一さんの個展「FAMILIA」を観て ①

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小林龍一さんの個展「FAMILIA」を観て ①

 先日、小林龍一さんの個展を観に行った。場所は札幌市中央区南1条西6丁目にある、The JOHNSON STOREの中である。かつて東急ハンズがあった所だ。

 僕が小林さんの作品で一番気に入っている所は、その個性の強さだろう。自分というものをはっきりと持っている顔をなさっている。僕は札幌に来て、この手の催しにはよく行くほうだが、正直言って、ちょっと手先の器用な子供のお遊び、といった印象が強かったのだ。色彩を派手にしたり、対象の並べ方を少し工夫をしたり……。

 僕はその方面に関しては全くの素人なので、偉そうなことを言えるわけもないのだが、彼の作品に接し、初めて凄いなと思ったのだ。彼の作品には熊の図柄が多い。しかも色彩は控え目で、ちょっとしたポーズの変化で数多くの作品を生み出している。その熊には目がないのだが、それが欠点とはならず、逆に多くのことを語りかけてくる気がするのだ。

 僕は見ているうちにだんだん楽しくなってきた。

 もう少し言えば、彼が描く動物には、彼の気持ちがこもっている気がするのだ。したがって、長い注目に耐えることができる。じっと見ていると、熊が話しかけたりするし、何かしようとしている気分が伝わってくるのである。これは要するに、描き手の気持ちがそのまま対象に乗り移っているからであり、それがない限り、この世界での成功は難しく思えるのだ。

 用紙にいくら洒脱な絵を描いてみせたところで、描き手の気持ちが伝わらない限り、僕にとっては無用の長物になる。この度、そのような描き手にお会いできたのは幸運としか言いようがない。

小林龍一 個展 | 家族
Ryuichi Kobayashi Solo Exhibition “FAMILIA”

会 期 | 2023年6月30日(金)- 7月10日(月)
時 間 | 11:00 – 17:00
会 場 | The JOHNSON STORE
住 所 | 札幌市中央区南1条西6丁目4-1 2F ROOM CURATION

The JOHNSON STORE
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山本光伸プロフィール

 札幌で出版社・柏艪舎と文芸翻訳家養成校・インターカレッジ札幌を経営しています。
 80歳で小説家デビューを機にブログをはじめました。
 ロバート・ラドラム『暗殺者』、アルフレッド・ランシング『エンデュアランス号漂流』(新潮社)、ボブ・グリーン『デューティ』(光文社)他、訳書は200冊以上。

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