僕の愛犬 ①
さて今度は、犬についてです。我が家は夫婦そろって犬好き、それも柴犬が大好きです。大型犬には、飼ったことがないからなのか、興味が沸かず、小型犬は今度はこちらの世話が大変そうでつい敬遠してしまいます。取り分け大型犬は、屋内で買うとどうしても大きすぎるような気がしてなりません。犬にも人間にもout of placeな気がするのです。
したがって僕が子供の頃から、自宅には柴犬、あるいは柴犬まがいの犬がいました。僕が柴犬を好きな理由は簡単です。 彼らはべたべたと人間に甘えてこないことです。確かに情熱的に振るまうこともありますが、普段は愛想のない顔をぶら下げて、人間様には興味がないという顔をしているのです。こちらもその気でいると、今度は体を摺り寄せてきたりします。そのたくまざる変化の幅が面白いのです。
人間の邪魔をしない犬というか、独自の感性を持った犬というべきか、我々夫婦にはまさに打ってつけの犬でした。客が来てわいわいやっていると、我が家の犬は知らん顔をしています。しかしそれが二時間、三時間となると、いろいろとちょっかいを出してきます。オナラをしたり、用もないのに我々の間を歩き回ったり。それでも無視していると、小さな声で鳴き始めるのです。そこで抱きしめてやると、その喜びようたるや大変なもので、こちらの顔をさんざんに嘗めまくるのです。
柏艪舎より刊行した『64の犬物語』