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翻訳家になるには? #4
翻訳家になるには? #4 ただ、僕は一つだけ申し上げたいことがあります。それは、文藝翻訳家を目指す方は何としても、日本語の小説――それも、現在巷に溢れているような意味不明のブックスではなく――を浴びるほどに読んでもらいたいということです。僕が一番腹の立つのが、いわゆる英文科の生徒です。もちろんこれには例外がいくらでもあるでしょうが、とにかく、英語が好きだから翻訳をやってみたい、と言うおかしな連中です。僕には絶対に理解できませんね、巷に溢れる廉価本をチョコチョコ読んで、それでアタシも翻訳家になりたいなんて“ほざく”連中が。 -
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翻訳家になるには? #3
翻訳家になるには? #3 しかしそんな僕が北海道へ来て、出版社を興し、文藝翻訳学校を始めて若い人々を指導しているのですから、これはもう奇跡としか呼べないではありませんか。僕は英語の書物を読んだことはほとんどありません。仕事でなら、それこそ何千冊と読んでいますが、自分が好きで読むものは日本語の小説と決まっているのです。つまり、太宰治、三島由紀夫、丸山健二らの作品です。彼らの作品はそれこそ繰り返し、繰り返し、滅多やたらと読んでいます。しかし、翻訳家になるにはどうしたらいいか? 僕は正直なところ、途方に暮れるしかありませんね。 -
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翻訳家になるには? #2
翻訳家になるには? #2 一本立ちする寸前に『ゴッドファーザー』を翻訳し、ベストセラー物を数本持つほどの“売れっ子翻訳家”になりました。これはもう、まったく僕の力ではなく、他のさまざまの要因からそうなっただけなのです。例えば『ゴッドファーザー』などは、訳者の二十人ほどが事務所に集められ、誰かこれをやってくれと頼まれたのですが、誰も手を挙げません。それはそうでしょう、それまでの日本の翻訳界に於いて、マフィア物が売れたことは一度としてなかったのですから。これだったらサボれるな、と思って僕は手を挙げました -
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翻訳家になるには? #1
翻訳家になるには? #1 さて、僕はよく文藝翻訳について質問されます。翻訳家になりたいけどどうすればいいか、とか。しかし僕はその度に少し緊張するのです。それは何故かと言うと、僕の文藝翻訳家デビューの経緯に問題があるからです。 -
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翻訳裏話ーーロバート・ラドラムの思い出 #3
翻訳裏話ーーロバート・ラドラムの思い出 #3 それからは大変だった。僕が空手をやっていることを伝えると、自分は陸軍で格闘術を教えていたと言い、二人でいろいろと実践する破目になったのだ。天麩羅屋の店内でのことだから、互いに手を抜くところは抜いたのだろうが、背がだいたい同じくらいの我々二人がまるで喧嘩しているような大騒ぎになった。 -
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翻訳裏話ーーロバート・ラドラムの思い出 #2
翻訳裏話ーーロバート・ラドラムの思い出 #2 さて当日、こちらは新潮社の女性編集員と、著作権事務所タトル・エージェンシーの代表、そして僕の三人はラドラム夫妻を出迎えた。ミセス・ラドラムは女優をしていらしたとかで美しい女性だった。そして肝心のラドラム氏は……それがなんとも冴えない人なのである。青のワイシャツ姿にズボン、どこから見てもそこいらの野暮親父と同じなのだ。こちらがテレビなどで見た颯爽たる中年男性はどこに行ってしまったのか? -
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翻訳裏話ーーロバート・ラドラムの思い出 #1
翻訳裏話ーーロバート・ラドラムの思い出 #1 今回はひとつ、何十年も前にロバート・ラドラム氏とお会いした時の話を書いてみたい。 もう三十年以上も前の話しだし、かなりうろ覚えのところもあるが、我が翻訳家人生では実に楽しい思い出になっている。 -
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僕の翻訳流儀―オリジナルを書くように訳す #2
僕の翻訳流儀―オリジナルを書くように訳す #2 そして今、オリジナル作品についても同じことが言えるような気がしている。最初は、翻訳と同じように、最初から最後までの成り行きを頭に入れていた。しかし今は、一読者になって作品を書いているのだ。いざコンピューターの前に座っても、何を書くかはわからない。いや、そうではないな。主人公の一人や二人については詳細なデータを頭に入れている。ただ彼らがどう動いて何をするかが決まっていないのだ。 -
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僕の翻訳流儀―オリジナルを書くように訳す #1
僕の翻訳流儀―オリジナルを書くように訳す #1 先日、ある質問を受けた。一冊の本を訳し始めてから終えるまでのスケジューリングについて教えてくれ、と。その時は、僕には何も変わったことはないから、とお断りしたのだが、また別の方から同じような質問を受け、僕も恥を晒す決心をしたわけだ。 -
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翻訳家の事件簿-最終章 書き足し事件 #2
翻訳家の事件簿-最終章 書き足し事件 #2 これは、僕が意図したように、あっさりと引き下がれる問題なのか、ということです。僕は構わないにしても、編集者はどうなのか。原稿をきちんと検索していないことがはつきりしているではありませんか。彼とはもう何十年もの付き合いで、互いの手の内はわかっていると言うつもりだったのでしょう。しかし、担当者が渡された原稿を見ないとは?