『トップガン』翻訳裏話 ①
今回の話題は、「トップガン」。現在上映されている「トップガン マーヴェリック」は第二弾で、何十年か前の作品の続編です。僕はかつて、北海道へのバイク旅行を計画して東京の事務所に向かいました。するとそこへ、角川書店の編集者から電話が入ったのです、緊急の仕事だが、何とかならないか、と。
僕はまず断りました。これから3週間旅に出るので難しい、と。すると相手は、いや、薄い本だし、旅に出ても何とかなるんじゃないか、と言うのです。僕はとうとう押し切られて、その本と、分厚い英語辞書を積んで旅に出ることにしました。
青森からフェリーに乗って、初めて原書を読んでみました。確かに難しくはないが、ジェットパイロットの用語が全然わからない。そこで自衛隊パイロツトの友人にチェックをお願いし、その点は安心できました。
しかし以降はどこかに止まる度に原書を引っ張り出し、宿に着くと3時間ばかりの翻訳作業に集中しました。一体何のための旅なのかと不審に思えるほどでしたが、僕はこのシンプルな物語が何と、気に入っていたのです。
3週間+2日間で、原稿を編集者に渡すことができました。その後すぐに、「トップガン」の試写会が催され、僕も招待されました。その前から、国内ではひっきりなしに「トップガン」のテーマ曲が流れており、それがこの映画の到着で一気に燃え上がったかのようでした。