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文芸翻訳家の僕が80歳で小説家デビューするまで ③

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小説と剣道、そして翻訳家に

一方、僕は30代から、暇なときに小説を書いてきました。

それはしかし、小説家になりたいという思いからではありませんでした。

僕は大学を8年かけて卒業しましたが、それは何も勉強がしたいわけではなく、卒業をしたら何をしたいのかという答えが手に入らなかったからなのです。何か当時の流行のような気もしますが、僕の大学では他に僕みたいにルーズな人間は見当たりませんでした。

僕は昔から剣道をやっており、中学一年から昔風の野蛮な剣道に鍛えられてかなり強かったのです。

大学卒業の前年に、僕は剣道で身を立てようと考えました。

卒業から30歳までの5年間、みっちり稽古すればかなりの段数になるだろう。では、それまでの生活をどうするかだ。結婚もしなければならない。女房は結婚して家に籠るよりも仕事をしたいと言っていたので、僕が小遣い稼ぎをすればなんとかなるんじゃないか、と考えたのです。

そこで思いついたのが “翻訳” でした。

僕は実は、剣道のほかにやりたいことがあるとすれば、それは作家業でした。

大学三年の時に一度退学して、何か書こうとしたのですが、結局は一行も物にならず、半年後に再受験してまた同じ大学に通うことになったというお粗末な事情があるのです。

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山本光伸プロフィール

 札幌で出版社・柏艪舎と文芸翻訳家養成校・インターカレッジ札幌を経営しています。
 80歳で小説家デビューを機にブログをはじめました。
 ロバート・ラドラム『暗殺者』、アルフレッド・ランシング『エンデュアランス号漂流』(新潮社)、ボブ・グリーン『デューティ』(光文社)他、訳書は200冊以上。

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