どこで暮らすか 住む場所の決め方は? ③
とまあ、漫画チックに言えばそうなるわけで、僕は在札幌の2年目からは、皆さん(!)と同じく、春こそが我が最愛の季節になったのです。今日は3月の5日です。さっきランニングから戻って来たところです。当別も雪が少なくなり、葉の落ちた木枝を見ると、もうきちんと春の装いを枝先に凝らしています。ああ、これから春か、そう思っただけで全身が沸き立つほどの熱気に包まれます。
僕は当別に来た当時、こんなザレ歌をこしらえました――春来たりなば、冬遠からじ。僕もこの30年で大分変化しました。だって考えるうちに、冬場に不満を持って北海道で暮らすことは無意味ではないかと思うようになったのです。僕が知っているだけで、東京に住み着いている北海道人が二人います。二人とも女性ですが、共に、北海道の冬の陰湿さが耐えられないと言うのです。
僕はそれを聞いて、何てつまらないことを言うのだろうと思ったわけですが、何と住み着くなり彼らと同じことを言い出したのですから処置なしです! 僕は東京で生まれ、東京で育ちました。つまり、他の土地を知らないのです。僕の兄弟は二人とも、未だに逗子に住んでいますから、まるでよそのことを知らないわけです。それを考えてみれば、せっかく僕は北海道に居を移しながら、冬がきついなどと文句ばかり言っている。これでは北海道に住む資格がないのではないか、と。
しかし、そう思いながらの30年が過ぎようとしています。僕は未だにスキーもアイススケートもやりません。雪を見ると腹立たしくなってくるのも往時のままです。しかし、何かが僕の中で芽生え始めているようなのです。
僕は北海道の一年間を丸々味わいたいと心から願っています。これまでのように、冬場の数か月間、下を向いて暮らしていたのでは何ともつまらない話ではありませんか。男八十一歳にして立つ――ことがどうなのかわかりませんが、僕は今、そういう境地にいるのです。